
建築・設備・内装・電気工事など、建築現場や設備工事などで活躍する“職人さんの車”といえば、真っ先に名前が挙がるのがトヨタ・ハイエース。
実際、多くの現場でハイエースを見かけるのは、その積載力と耐久性、整備のしやすさなどが理由です。職人さんは使う工具や部品などが多いため、荷物が積める車種が人気なのです。
荷物がたっぷり積めて、なおかつ現場の過酷な環境にも耐えられる設計。さらに、全国どこでも整備できる安心感も選ばれるポイントです。
ただし、どの職人さんにとっても「ハイエース一択」でいいのかというと、そういうわけでもありません。
職人の業種や仕事内容によって、求められる車のタイプは違ってきます。
たとえば内装職人や電気工事の方など、工具中心で材料をあまり積まない業種なら、維持費の安い軽バンで十分というケースもあります。
逆に、材料や機材、さらに複数名の職人を一緒に運ぶ必要がある業種では、やはりハイエースのような大型のバンが重宝されるでしょう。業種や場合によって選び方は様々です。
そこで今回は、荷物が積みやすく、現場での使い勝手に優れた職人向けの車をピックアップしてみました。これから車を選ぶ方はぜひ参考にしてください。
バン

「バン」とは、一般的にトラックではない商用車の箱型ボディを持つ普通車を指す呼び方です。正式には「貨物車」などに区分されます。
建築現場では日常的に荷物をたくさん積めることが最重視されるため、積載量ダンがトツで高いこのバンタイプを検討するのはとても良いと思われます。
ただとても大きく、たくさんの荷物が積載できる反面、値段も高く、取り回しもしにくいというデメリットもあります。
日本で職人さんに選ばれている、最王道の大型バンはこの2車種:
- トヨタ・ハイエースバン(200系 4型)
- 日産・NV350 キャラバン(旧呼称 NV300は欧州向け)
このバンという車種のジャンルはハイエースとNV350キャラバンのライバル対決で、他の車種はあまり入る余地がありません。
職人さんに1番売れているのはハイエースですが、NV350キャラバンも負けず劣らず人気があります。
キャラバンは室内長が少しだけ長い、衝突安全性能が高いなどといったメリットもありますので一長一短です。
どちらも「荷室の広さ」「耐久性」「乗車定員」「燃費」などが非常に拮抗し、用途や好みに応じて選ばれています。それぞれ特徴や各スペックを整理してみましょう。
トヨタ・ハイエースバン(200系 4型/DXグレード)
- 全長:4,695 mm、全幅:1,695 mm、全高:1,980 mm
- 荷室長:約3,000 mm、荷室幅:1,545 mm、荷室高:1,335 mm
- 燃費:11.0 km/L(WLTCモード)
- 変速機:6速AT
- 最小回転半径:5.0 m
- 新車価格:約2,346,545 円
→ 6速ATで滑らかな走り、荷物満載時の回転操作にも強い。燃費や取り回し面でもややリード。
日産・NV350 キャラバン(E26型/バンDXグレード)
- 全長:4,695 mm、全幅:1,690 mm、全高:1,990 mm
- 荷室長:約3,050 mm、荷室幅:1,545 mm、荷室高:1,350 mm
- 燃費:9.9 km/L(WLTCモード)
- 変速機:5速AT
- 最小回転半径:5.2 m
- 新車価格:約2,239,920 円
→ 荷室長でハイエースを上回る。直近の2021年モデル以降、安全・快適装備が強化され、「乗っても快適」という評価も多数。
比較まとめ
項目 | ハイエースDX | キャラバンDX |
荷室長 | 3,000 mm | 3,050 mm |
燃費 | 11.0 km/L | 9.9 km/L |
最小回転半径 | 5.0 m | 5.2 m |
AT段数 | 6速 | 5速 |
車両価格 | 約2.35M円 | 約2.24M円 |
ハイエースは燃費・AT段数・旋回性で優位。
キャラバンは荷室長・安全装備・価格でアドバンテージあり。
小型バン(4ナンバー車)

「大型バンは大きすぎる」「軽バンでは少し積載力が心配」という職人さんにぴったりなのがこの程よいサイズの小型バン。日本では一般に「4ナンバー登録の商用バン」や「小型貨物自動車」と呼ばれ、見た目はバン、でも街中や現場でも扱いやすいサイズ感が人気の理由です。
もちろん積載量は大型のバンには劣りますが、ある程度の荷物を積む車としては十分なサイズ。5人載ってさらに、荷物をたくさん積むことも十分に可能です。
「バンってデカすぎるんよね。もう少し小さくてもいいんだけど。」って方には最適なクルマです。
車種ですが、こちらも大型バンと同じく、人気はトヨタと日産に集まっています。
実際の車種としては、以下の3台が現場でも特に選ばれています:
- トヨタ・タウンエースバン
- 日産・NV200バネット
- トヨタ・ルーミー/ダイハツ・トール系(※職人カスタム車もあり)
特に前2種は、荷室性能と取り回しの良さで差がついています。
トヨタ・タウンエースバン
- 全長:4,065 mm、全幅:1,665 mm、全高:1,930 mm saitama631.comcarsensor.net+2sol.r-kyoto.co.jp+2carsensor.net+2
- 荷室(2名乗車時):奥行2,045 mm×幅1,495 mm×高さ1,300 mm carsensor.net
- 最大積載量:750 kg(4WDは700 kg)saitama631.com+3kanagawatoyota.co.jp+3carsensor.net+3
- 最小回転半径:4.9 m(4WD:5.3 m)youtube.com+15kanagawatoyota.co.jp+15carsensor.net+15
コンパクト且つ高天井&ワイド開口で積み込みも楽、狭路や都市部でもストレスフリー。安全支援機能も装備され、まさに“職人向きコンパクトバン”の代表格です。
日産・NV200バネット
- 全長:約4,400 mm、全幅:1,695 mm、全高:1,855 mm 221616.com+5kanagawatoyota.co.jp+5sol.r-kyoto.co.jp+5sol.r-kyoto.co.jp+1carsensor.net+1
- 荷室:商用モデルでも低床+高天井で、クラストップの積載能力を誇る設計 221616.com+1motor-fan.jp+1
FFレイアウトで前席下の長尺積載も可能、汎用性高く、リフォームや配送現場でも活躍。2025年モデルはインテリジェントDAや踏み間違い衝突防止など衝突安全も強化されました toyota.jp+12matome.response.jp+12221616.com+12。
その他:職人カスタムに実績ありモデル
商用規格ではないものの、「荷室をDIYで仕上げて職人車に仕立てる」ケースが増えているのが、乗用ベースのトヨタ・ルーミーやダイハツ・トール系。このクラスは軽バン以上小型バン未満のボディサイズですが、改装性の高さや乗用車的快適性が魅力です。
用途別まとめ
用途 | 推奨モデル | 特徴 |
狭路走行+積載必要 | タウンエースバン | 小回り◎、高積載、商用専用設計 |
長尺物+多機能性 | NV200バネット | 長尺積載可能、安全装備◎ |
快適性+改造DIY | ルーミーなど | 商用規格外でも個性派に人気 |
これら3車種の現場での人気ですが、やはりトヨタのタウンエースが少し強い印象です。
商用バン(ライトコマーシャルバン / 4ナンバー車)

商用バンは、一般のバンよりも背(全高)が低く、軽自動車よりも重い仕事をする「ちょうど良い」商用貨物車です。日本では「商用車」「ライトコマーシャルバン」「4ナンバー商用車」と呼ばれます。ハイエース級の大型バンや小型バン、軽バンと並び、「中間サイズ」の位置づけです。
この中で最も支持されているのがトヨタ・プロボックスと日産・ADバンの2台です。
プロボックスは開発段階から商用仕様に特化。そのためリアサスや車体剛性が強化され、耐久性・走破性・荷室の使いやすさにおいて一歩リードしています。燃費も約17~19 km/Lと経済的で、年間に5万km以上走る現場でも安心です。
ADバンは乗用クルマの実用的な使い勝手を受け継ぎつつ、商用の強化版として販売。荷室も広く、使い勝手は良好ですが、エンジンや足回りは乗用ベースの流用です。つまり中身は普通の乗用車に近いと言えます。
そんな訳で耐久性では商用専用設計のプロボックスに軍配が上がります。
職人さんの使い方で重要なのは「毎日道具を積み込み、酷使しながら走るかどうか」です。もし年間5万km級の過酷使用になるなら、ADバンの乗用車のエンジンや足回りでは耐久性が全く足りず、プロボックスの専用商用設計が光ります。
ADバンも、もちろん対策はしているとは思われますが、元々サラブレッドの生まれ持った血統と、あとから鍛えた混血では全く勝負になりません。
荷物を多く載せて走った時の安定感なども全く違いますし、職人の人気はプロボックスの一人勝ちのジャンルです。
ただ街乗りメインで、たまに荷物も積む程度なら、ADバンでも十分に実用的です。
軽バン(軽キャブオーバー商用車・4ナンバー軽貨物)

軽バンは、軽自動車規格(全長3.4 m・全幅1.48 m・排気量660cc)に完全適合したワンボックスタイプの軽貨物車です。正式には軽キャブ型貨物軽自動車と呼ばれています。
まず軽バンの魅力について触れておくと、なんといっても維持費が安いことがあげられます。背が高く、荷室も広く取れる一方、税金や高速料金は格安。また燃費もよく非常にコストパフォーマンスが高いです。そのため中小規模の運送や個人職人にとって、コストパフォーマンス抜群の仕事車です。
しかし、デメリットとしてやはり積載量はもの足りないと言えると思います。
主要モデルは、
・スズキ・エブリイ
・ダイハツ・ハイゼットカーゴ
・ホンダ・N‑VAN
の3車種。
他にも各メーカー様々なバンが出ているのですが、上記3種以外はすべてOEM生産となります。OEM生産とは他メーカーが作った車をバッチだけ自社の物に変えて販売する方法の事。ですのでこの3車種の中で比較していきましょう。
エブリイは荷室の高さと床面長がトップクラス。CVT・MTなど選べて、荷物だけでなく車中泊用途にも応えられる万能選手です。
ハイゼットカーゴは実燃費の良さでは最上位。長尺物の扱いやすさにも定評があります。
N‑VANはフラットフロア設計で車内改装の土台が作りやすく、DIYベース車として人気。国産軽バンでは珍しい高燃費仕様も魅力です。
いずれも最大で段ボール箱数十箱、ビールケース数十ケースを積める積載力を持ち、都市配送から現場仕事まで幅広く活躍中です。
軽自動車というのは、大きさの上限やエンジンの大きさなど軽自動車規格(全長3.4 m・全幅1.48 m・排気量660cc)が決められています。
その上限になる大きさを最大限に使い、極限までに最適化して作られているのが軽バン。
ですので大きさなど基本的な構成は、どのメーカーでも同じです。
そんな中、使い勝手など頭ひとつ抜け出しているのがスズキのエブリィです。
スズキは軽自動車を作るのが得意なメーカーで、他にもワゴンRなど軽自動車の名作を生み出しています。運転のしやすさなどでも、目を見張るものがあります。
しかし全体的に比較をして、主要な軽バン3車種(エブリイ・ハイゼット・N-VAN)は、サイズや基本性能の面で大きな違いはなく、どれも一定の完成度を備えた使いやすい車に仕上がっています。
そのため、もし普段から付き合いのあるディーラーがあるなら、信頼性やアフターサービスを考えてそこで購入するのも良いでしょう。
特にこだわりがなければ、中古車市場で状態の良いものを選んでも十分に活躍してくれるはずです。
ただし、スバル・サンバー(旧モデル)については注意が必要です。
独自のリアエンジン・後輪駆動(RR)レイアウトを持ち、走行安定性や積載力で一部のファンに根強い人気がありますが、すでに生産終了しており、中古市場ではプレミア価格がつくことも少なくありません。そのため、コストパフォーマンスや維持面を重視する方にはあまりおすすめできません。
まとめ
ここまで職人におすすめの車をジャンルごとに紹介してきましたが、最後にもう一度整理しましょう。おすすめは
種類 | 車種 | 特徴 | 適した業種 |
大型バン | トヨタ・ハイエース | 積載力・耐久性が最高レベル | 建築・設備・塗装など |
大型バン | 日産・キャラバン | 荷室がやや広く安全性能も◎ | 建築・電気工事など |
中型バン | トヨタ・タウンエース | 街乗りしやすく積載も十分 | リフォーム・設備 |
商用バン | トヨタ・プロボックス | 商用専用設計、燃費も◎ | 営業兼作業・軽設備 |
軽バン | スズキ・エブリイ | 安くて積めて走れる軽王者 | 電気・清掃など個人業 |
の5車種となります。さすがトヨタが強いですね。
20万キロ走ってもへこたれない丈夫さを持っています。
ただしADバンは除き、どのメーカーもそこまで大きな差があるわけではありませんので、最後はご自身が気に入った車種を選ぶのが一番です。どの車も「現場で使い倒せる」モデルばかり。デザイン、積載量、耐久性などを比較して、愛着のわく車を選びましょう。