
地質調査業で働く一人親方の皆さまへ。一人親方部会では、これまで多くの地質調査業の一人親方様に労災保険をご加入いただいております。
この記事では、地質調査業の仕事内容や年収、資格取得によるキャリアアップ方法、さらに実際の労災事故例までを詳しく解説します。
地質調査業の一人親方とは?
地質調査とは、地盤の性質や状態を科学的に調査する業種です。
一見すると建設業とは別分野に見えますが、実際には建築物を支える杭を打ち込むための地盤情報を提供する、建築の基盤を支える重要な仕事です。
国の許可業種として「地質調査業」は建設業の一種に含まれています。
特に2001年から住宅にも地質調査が義務化されたことで需要が急増しました。
現在では、個人住宅の調査業務の多くが一人親方によって担われており、独立して活動しやすい業種といえます。
地質調査業の人から聞いた仕事の魅力
やりがい・面白さ
- 自然や地盤の秘密を知る仕事
「地下や山の中の土や岩を調べて、地形の成り立ちや強度を理解できるのが面白いです。毎回現場が違うので、飽きません。」 - 社会インフラを支える誇り
「道路やトンネル、ダムなどの建設に欠かせない地質データを提供する仕事です。自分の調査が建物や構造物の安全に直結していると思うと、責任感もやりがいも大きいです。」 - 達成感
「ボーリングやサンプリング、解析を終えたときに ‘ここまでやった’ という達成感があります。地質図や報告書をまとめて完成させると充実感があります。」
この仕事を目指した理由
- 「子どもの頃から地層や山、川など自然が好きで、地質調査はそれを仕事にできる唯一の職業だと思った。」
- 「社会インフラに関わる責任ある仕事をしたかった。建物や道路の安全を守ることにやりがいを感じる。」
- 「野外での作業や測量、機械操作など、理論だけでなく体を動かす仕事が好きだった。」
- 「将来的にはプロジェクトマネージャーや解析専門家として、調査データをもとに設計や施工の提案をしたい。」
魅力ポイントまとめ
- 自然・地盤の知識が直接社会に役立つ
- 日々違う現場で変化があり、飽きない
- 技術・資格でキャリアアップや給与UPが可能
- 現場作業とオフィス作業のバランスがあり、多様な働き方ができる
- 責任のある仕事で達成感を得やすい
地質調査業の年収
地質調査業の平均年収は約422万円で、建設業全体の平均と同程度、日本人の平均年収とほぼ同水準です。
地域や担当する工事内容によって差はありますが、年齢ごとの会社員の平均月収は以下の通りです。
- 20代:24.6万円
- 30代:31.2万円
- 40代:45.5万円
年齢を重ねるにつれて収入は上昇する傾向があります。
また、一人親方は仕事の受注範囲を選びやすく、特定の分野に特化することで高収入も目指せます。
一人親方が取得すると有利な資格
地質調査業において有利になる資格は、大きく分けて以下の2つです。
1. 地質調査技師
地質調査技師は、一般社団法人全国地質調査業協会が認定する資格で、ボーリングなど地質調査の技術を証明します。
2015年に国土交通省により国家資格として認められ、公共工事の品質確保に必要な技術者資格となりました。
資格区分は以下の3種類です。
- 現場調査部門
- 現場技術・管理部門
- 土壌・地下水汚染部門
受験には学歴に応じた実務経験が必要です。
例:
- 土木工学・建築学・鉱山学・地質工学等専攻:大卒3年、短大・高専卒5年
- 理工系その他:大卒5年、短大・高専卒7年
- 非理工系:大卒6年、短大・高専卒8年
資格がなくても業務は可能ですが、将来的には建設キャリアアップシステム(CCUS)により、資格・経験の有無が仕事受注に直結する可能性が高まります。
2. 施工管理技士
施工管理技士は、建設業許可や工事費1,000万円以上の工事を請け負う際に必要な独占資格です。
地質調査業では「建築施工管理技士」が該当します。1級と2級があり、受験資格は学歴・経験により異なります。
1級建築施工管理技士の受験資格(例)
- 大学指定学科卒+3年以上実務経験
- 大学指定学科以外卒+4年6か月以上
- 高専・短大指定学科卒+5年以上
- 高卒指定学科卒+10年以上
- 学歴なしの場合は15年以上 など
2級建築施工管理技士の受験資格(例)
- 大学指定学科卒+1年以上
- 大学指定学科以外卒+1年6か月以上
- 高卒指定学科卒+3年以上
- 学歴なしの場合は8年以上 など
1級は合格率20%未満の難関資格で、保有者も少ないため取得すれば大きな武器になります。
地質調査業の一人親方として働くメリット
- 地質調査は建築・改築時に必須のため、仕事が安定している
- 一人親方への依存度が高く、独立しやすい
- 特定分野で専門性を高めれば高収入も可能
デメリット
- 地質や地盤に関する科学的知識が求められる
- 学術的な内容が多く、知識習得に時間がかかる
- 肉体労働のみを希望する人には不向き
実際の労災事故事例
事例1:ボーリングマシン搬入中の転落事故
本災害は、地すべり対策工事に先立つ地質調査のため、調査地点へのボーリングマシン搬入用の仮設道路をドラグ・ショベルで開設中に発生したものである。作業中、ドラグ・ショベルが路肩から斜面に転落し、運転していた被災者が下敷きになり死亡した。
地質調査は山中の調査地点で実施され、ボーリングマシンを搬入するため、既存の山道から分岐する形で仮設道路を新設する工事であった。開設中の仮設道路は幅約1.5m、延長約30m、斜度25度で、谷側斜面の傾斜は約40度であった。さらに、連日の雨により粘土質地盤が緩んで滑りやすくなっていた。
災害発生当日の午前中、被災者は他の作業者とともに、道路開設の準備として、障害となる杉の根をチェーンソーで切断する作業を行った。その後、被災者は一人でドラグ・ショベル(機体重量約1t、幅1m、ゴム製クローラ装着)を運転し、既存山道の拡幅作業を実施し、午前中の作業を終了した。
午後5時頃、他の作業者が被災者を下山途中に探したところ、東側斜面で転落したドラグ・ショベルの下敷きになった被災者を発見した。
事例2:トンネル工事中の天盤崩落事故
被災者は、NATM工法による道路トンネル工事の地質調査を担当しており、地質調査終了後にトンネル設計図が完成した段階でも、施工中に数回現場に足を運び地質の確認を行っていた。
災害発生時、被災者を含む5人は坑口から右側から左側へ移動しながら、岩をハンマーで叩く作業を行っていたところ、突然中央部の天盤が崩落し、被災者が約1㎥の土砂により生き埋めとなった。土砂を取り除き救出を試みたが、同じ箇所から再度崩落が発生した。バックホウを用いて土砂を除去し救出したものの、被災者は既に意識を失っていた。
災害発生箇所の切羽付近では、コンクリートの吹付けは行われていたが、ロックボルトは未打設であった。ロックボルトは1.5m間隔で設置されており、最終打設位置は切羽から約4m離れていた。また、当該切羽の掘削は早朝から実施されており、一部には風化した花崗岩が確認されたが、それ以前は良好な花崗岩の層であったことから、施工業者の担当者は地質は安定していると判断し、工法の変更は行われなかった。
まとめ
地質調査業は、建設業の中でも安定性が高く、独立しやすい分野です。
一方で専門知識が不可欠であり、資格取得や経験の積み重ねが収入や仕事の幅を大きく左右します。
特に、将来的に資格や経験が必須化する可能性を考えると、早めのスキルアップが重要です。