
ハウスクリーニングは加入可能か?
「ハウスクリーニング業でも一人親方労災保険に入れますか?」――この質問は非常によく寄せられます。
実は、この疑問の背景には業種区分の誤解があります。
建設業には「美装工事」「家洗工事」という分野があり、これらがハウスクリーニングと混同されがちです。
しかし、単なるお掃除代行業(家庭の清掃を請け負う業務)は建設業には該当せず、そのままでは一人親方労災保険には加入できません。
加入の可否は、実際に行っている作業内容が建設業に該当するかどうかで判断されます。
ハウスクリーニングとは
一般的に「ハウスクリーニング」とは、キッチン・バス・トイレなどの水回りや、エアコン内部などの清掃を専門に行う掃除代行業者を指します。
公益社団法人全国ハウスクリーニング協会の定義でも、これらは家事代行に近い清掃サービスとして位置づけられます。
美装工事とは
「美装工事」は、新築や改修後の建物を引き渡す前に行う竣工清掃のことです。
対象はビル・マンション・戸建て・店舗・病院など幅広く、建物内部・外部を隅々まで清掃して施主に引き渡します。
業界によっては「建設雑工事」「雑工」と呼ばれることもあります。
建設業許可の区分では、「清掃施設工事業」または「内装仕上工事業」に該当するケースが多いです。
家洗工事とは
「家洗工事(洗い屋)」は、もともと木造建築物の木部の汚れを落とす専門職として発展しました。
歴史は古く、神社や仏閣での祭事における「お清め」「厄払い」から始まったとされています。
現在でも、木部のアク洗いやシミ抜きなど、専門的な技術を要する作業として一部の業者が担っています。
なぜハウスクリーニング業者が加入を希望するのか
一見、ハウスクリーニング、お掃除代行などの清掃業務は危険性が低く、労災保険の必要性が薄いように思えます。
それでも労災保険に加入希望がある理由は、元請企業からの要請があるためです。
特に建設会社やマンション管理会社から「労災保険加入が条件」とされるケースが多く、実際の業務に軽微な補修作業が含まれることもあります。
例えば、
- 手すりや棚の補修
- 床下収納や表札・ポストの修繕
- クロスの貼り替えや簡単な電気工事
こうした作業は建設雑工事に近いため、一人親方労災保険の対象となる可能性があります。
お掃除代行は中小企業事業主の特別加入へ
一方、一般家庭からの依頼で掃除のみを行う「お掃除代行業者」は、建設業に該当しないため一人親方労災保険には加入できません。
この場合、労災保険に加入したいなら中小企業事業主の特別加入を検討することになります。
ただし、純粋な家事代行業務は作業上の危険が少ないため、実際には労災保険の需要が低いのが現状です。
無理な加入のリスク
業種に該当しないのに無理に加入すると、労災事故が発生した際に給付を受けられない可能性があります。
労働基準監督署は、事故後に実際の仕事内容を詳細に確認します。その結果、建設業と認められなければ労災保険は不支給となります。
また、依頼主が一般家庭の場合は自分が元請扱いになるため、一人親方労災保険の建前上、労災適用外とされるケースもあります。
加入判断は一人親方部会にお任せ!
一人親方労災保険に加入したいと考えているハウスクリーニング業の方から、「労災保険特別加入団体に申し込んだら、“ハウスクリーニングだから対象外です”と断られてしまった」という声をよく耳にします。
実際、加入団体の中には 「ハウスクリーニング=建設業ではない」と言葉だけで判断して、門前払いしてしまうケース があるようです。
しかし、一人親方部会では違います。
私たちは、加入を希望される方の
- 実際に行っている作業内容
- 元請会社の業種や依頼内容
を丁寧にヒアリングし、実質的に「建設業に該当する作業」かどうかを正しく判断 いたします。
たとえば、
- 新築やリフォーム後の美装工事を行っている
- 建設会社や管理会社の下請けとして、引き渡し前清掃を請け負っている
といったケースでは、建設業に従事する一人親方(個人事業主)として労災保険に加入可能 です。
つまり、他の団体で断られてしまっても、埼玉労災一人親方部会なら門前払いはしません。
まずはしっかりとお話を伺い、そのうえで適切に判断いたします。
まとめ
一般家庭から依頼を受けて行う日常的なお掃除代行サービスは、建設業に該当しないため一人親方労災保険に加入できません。(例:掃除機がけ、キッチン・浴室の清掃、片付け代行など)
しかし、同じ「クリーニング」でも、
- 新築やリフォーム後に行う 美装工事(建築美装)
- 引き渡し前の 家屋クリーニング(家洗工)
といった作業は建設業に分類されるため、一人親方労災保険に加入可能です。
さらに、建設会社・ビル管理会社・マンション管理会社の下請けとして業務を行っているハウスクリーニング業者の方も、実際の作業内容が建設業にあたる場合には加入できるケースがあります。
ポイントは、「業務内容が建設業に該当するかどうか」です。
たとえば…
- 内装工事後の仕上げ清掃 → 加入対象
- 日常的なエアコン掃除やハウスダスト除去 → 加入対象外
このように線引きがあり、判断が分かれることも少なくありません。
そのため、加入を希望される方は、ご自身の業務内容をできるだけ具体的に労災保険特別加入団体へ説明することが大切です。
正しく業務内容を伝えることで、加入可否がスムーズに判断されるでしょう。
- 家庭向け掃除代行のみ → 建設業に該当せず、一人親方労災保険は加入不可(中小企業事業主の特別加入が必要)。
- 美装工事・家洗工など建設関連の清掃業務 → 一人親方労災保険加入の可能性あり。
- 実際の業務に補修作業や建設関連作業が含まれる場合 → 元請の要望に応じて加入できることがある。
- 無理な加入は事故時の給付拒否リスクがあるため、業務内容を正確に説明して判断を受けることが重要。