
「ビルメンテナンスって建設業じゃないよね?それでも一人親方労災に入れる?」
現場でこんな質問をよく耳にします。
答えは一言でいえば「場合による」。ですが、この「場合による」の中身が重要なんです。
ビルメンテナンス業そのものは、法律上は建設業に分類されません。
しかし、実際の仕事を見てみると、多くの作業は建設業に深く関わっています。
例えば、設備の修理や交換、空調工事、配管工事、営繕工事などは、れっきとした建設業に該当します。
つまり、業務内容が建設業に当たるなら、一人親方労災保険への加入は可能というわけです。
実際の協力業者募集を見てみよう
では、実際に存在するビルメンテナンス会社の「協力業者募集」の例を見てみましょう。
- 電気工事:電気工事全般(都内及び近県の業者)
- 空調設備:冷暖切り替え、修理オンコール対応(都内及び近県の業者)
- 給排水設備:ポンプ交換、修理オンコール対応(都内及び近県の業者)
- ビル管理技術者:個人請負可
- ビル清掃:日常清掃パート派遣、床定期清掃、カーペット・家具洗浄
- 特殊建築物定期調査:個人請負可、専門業者歓迎
- 建築設備定期検査:個人請負可、専門業者歓迎
- 営繕工事一式
これを見ると、電気工事や空調、給排水、営繕など、完全に建設業に該当する業務が含まれていることがわかります。
つまり、ビルメンテナンス業の中でも「何をやっているか」が加入可否を決める鍵です。
なぜメンテナンス業の人が一人親方労災に入りたがるのか
一見すると、ビルメンテナンス業は清掃や設備点検など、あまり危険がなさそうに思えるかもしれません。
ですが、現実には脚立作業、高所作業、重量物の搬入、電気系統の点検など、事故のリスクは決して低くありません。
特に近年は、元請(ビルメンテナンス会社)が協力業者に労災保険加入を義務付けるケースが増えています。
これは、安全配慮義務や契約条件の一環で、「労災に入っていないと現場に入れない」というルールが広まっているからです。
そのため、建設業に該当する作業をしているメンテナンス業者なら、一人親方労災保険に加入するメリットは大きいといえます。
建設業に該当しない作業は要注意
逆に、ビル清掃やビル管理技術者など、建設業に該当しない作業は一人親方労災に加入できません。
こうした場合は、中小企業事業主の労災保険特別加入制度を利用する必要があります。
ここを間違えて、無理に一人親方労災に加入すると危険です。
なぜなら、事故が起きたときに「実際の作業が建設業でない」と判断されれば、給付が認められない可能性があるからです。
無理に加入してトラブルになった例
- 事例:給付不支給の判定
ビル清掃を中心に業務を行っていた個人請負のCさんが、一人親方労災に加入。
作業中に脚立から落下して負傷し、給付を申請したところ、労基署から「業務内容は建設業ではない」と判断され、不支給決定。
その後、中小企業事業主特別加入で入り直すことになり、治療費は自己負担になってしまった。
中小企業事業主の労災特別加入という選択肢
建設業でない作業の場合は、中小企業事業主の労災特別加入が現実的です。
これは、法人の代表や個人事業主でも、危険な作業を伴う業務に従事していれば加入できる制度です。
例えばビル清掃業者でも、高所ガラス清掃や大型機械の操作など、労災リスクの高い作業をしていれば対象になります。
一人親方部会が相談に乗ります
一部の労災保険特別加入団体では、「メンテナンス業」という肩書きだけで門前払いされることがあります。
しかし、一人親方部会では、仕事内容や元請の業種などを詳細にヒアリングし、事実上建設業に該当するなら加入を認めます。
他団体で断られた人が、こちらで加入できたケースも珍しくありません。
まとめ
- 業務内容が建設業に該当するメンテナンス業者 → 一人親方労災保険に加入できる
- 業務内容が建設業に該当しない場合 → 中小企業事業主の労災特別加入が必要
- 無理に一人親方労災に入ると、給付不支給のリスクあり
- 団体によって加入判断が違うため、詳細なヒアリングをしてくれる団体を選ぶのが重要