外国人労働者が増える建設業、労災への対応はどうする?

建設現場では日々さまざまな国籍の方が働いており、近年は「特定技能」「技能実習」などで来日する外国人労働者が急増しています。
現場作業は常に危険と隣り合わせであり、転落・転倒・挟まれ事故などの労災リスクは日本人・外国人を問わず存在します。

では、もし外国人労働者が現場でケガや病気をした場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?

この記事では、外国人労働者の労災発生時の対応手順と、労災保険をはじめとする保険制度について詳しく解説します。


外国人労働者が業務中にケガ・病気をした場合の基本対応

結論から言うと、外国人労働者が業務に起因して病気やケガを負った場合も、日本人労働者と同じように労災保険の対象となります。そのため、対応の流れもほぼ同様です。


① 労災指定医療機関で受診する

まずは、労災指定病院にて「療養の給付請求書」を提出して受診します。

業務災害であれば様式第5号、通勤災害であれば様式第16号の3を使用します。

労災指定医療機関では、医療費は全額労災保険から給付されるため、窓口負担はありません。

厚生労働省の公式サイトから申請書をダウンロード可能です。

あらかじめ職場や現場に用意しておくと、緊急時にも慌てず対応できます。


② 日本人スタッフの同行が重要

外国人労働者が単独で受診すると、症状の説明や事故状況の伝達に誤解が生じる可能性があります。

言語の壁や文化の違いから、診療内容を正確に理解できないケースも少なくありません。

そのため、受診時は可能な限り日本人スタッフまたは通訳者が同行し、事故状況・症状・治療内容などを適切に伝えられるようサポートしましょう。

また、精神的な安心感を与えることも大切です。異国でのケガは不安が大きいため、同伴者がいることで冷静に対応できます。


③ 労働基準監督署への報告(労働者死傷病報告)

労災が発生した場合は、労働基準監督署へ「労働者死傷病報告」を提出する義務があります。
提出期限は休業日数によって異なります。

労災の状況報告の提出時期
死亡事故・4日以上の休業事故発生後すぐ
4日未満の休業3か月ごとにまとめて提出(四半期報告)

提出先は「事故現場を管轄する労働基準監督署」です。
会社所在地の監督署とは異なることがあるため、管轄の確認を忘れずに行いましょう。


④ 労災保険の給付申請を行う

労災保険の給付は「申請主義」です。

原則として労働者本人(または遺族)が申請を行いますが、外国人の場合は書類内容が理解しにくいため、会社側が代行・支援するのが望ましいです。


外国人労働者も労災保険の対象に含まれる理由

労働基準法および労災保険法では、「労働者」の定義に国籍の制限はありません。

つまり、雇用契約を結んで賃金を受け取っていれば、外国人でも労災保険の適用対象です。

また、「特定技能」「技能実習」などの在留資格で就労している場合、所属機関(受け入れ企業)には労災保険への加入義務があります。

特定技能基準省令第2条にも、「特定技能所属機関は、労災保険の適用事業所であること」と明記されています。


労災保険以外にも外国人が加入すべき保険制度

外国人労働者も、日本人労働者と同じく複数の社会保険制度に加入します。

主なものを以下にまとめます。


健康保険

常用雇用される労働者は、健康保険への加入が義務です。

医療費の3割負担で診療が受けられ、病気やケガの治療・手術・入院などに備えられます。

短期雇用やアルバイトの場合は、国民健康保険に加入します。


厚生年金・国民年金

将来の老齢年金や障害・死亡時の遺族給付を受けるための制度です。

  • 厚生年金:正社員などの常用雇用者
  • 国民年金:フリーランスや非雇用者、短期滞在者など

これらは外国人労働者も対象であり、保険料を支払えば日本人と同じ給付を受けられます。


外国人労働者の労災発生状況(建設業)

厚生労働省の「外国人労働者の労働災害発生状況(令和6年)」によると、建設業では休業4日以上の労災事故が 1165件 発生しています。

死亡者は 16人にのぼりました。

事故の主な原因は以下のとおりです。

原因発生件数
はさまれ・巻き込まれ199件
墜落・転落222件
飛来・落下156件

特に死亡事故では「墜落・転落」が最も多く、安全教育・足場管理の徹底が求められます。


外国人労働者の労災を防ぐための取り組み

1. 母国語での安全衛生教育

安全に関する説明を日本語だけで行うと、理解に差が生じやすいです。

可能であれば、母国語(ベトナム語・インドネシア語・ミャンマー語など)での研修資料や動画を用意しましょう。

2. 多言語での現場標識

現場内の警告サインや注意喚起を**複数言語(英語・ベトナム語など)**で表示することで、事故を未然に防げます。

3. コミュニケーションの定着

日常的に声をかけ、体調や疲労を確認することで、小さな不調を早期に発見できます。

「体調が悪い=報告してはいけない」という誤解をなくす教育も重要です。

4. 痛みや症状を伝える日本語教育

「ズキズキ」「ピリピリ」など、日本語特有の表現を教えることで、症状を正確に医師に伝えられます。

医療通訳がいない地域では、こうした基礎日本語教育が大きな助けになります。


まとめ|外国人労働者も安心して働ける環境を整えることが重要

外国人労働者が業務中・通勤中にケガや病気をした場合、労災保険は日本人と同様に適用されます。

ただし、スムーズな手続きや適切な診療のためには、日本人スタッフによる同行・支援が不可欠です。

一人親方部会グループでは、建設業界で働く外国人労働者の安全と権利を守るため、

労災保険の特別加入手続きや、現場での安全教育支援を行っています。

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安全で安心な現場環境を整えることが、日本で働くすべての労働者の未来を守る第一歩です。