一人親方

一人親方になるなら屋号の設定を慎重に

一人親方として開業する際、税務署に提出する「開業届」には屋号(ビジネスネーム)を記載する欄があります。
屋号は法律上の義務ではありませんが、請求書・名刺・銀行口座など、日常業務で頻繁に使うため、後から変更するのは非常に面倒です。

いったん決めた屋号は長く使い続けることが前提となるので、今回はその決め方のコツや注意点、アイデアについて解説します。


屋号とは?どこで使う?

屋号とは、事業を行う際の名称(ビジネスネーム)のことです。
具体的に使用する場面は以下のようなものがあります:

  • 請求書や領収書の発行
  • 銀行口座の屋号付き名義の開設
  • 名刺、看板、ホームページなど

つまり、取引先やお客様との信頼関係にも関わる重要な要素です。ふざけた名前や読みづらい名前では、ビジネスに支障が出る可能性があります。


屋号をつけるのは義務ではないが…

開業届に屋号の記載欄はありますが、記入は任意です。
実際に、屋号を付けずに本名だけで活動している一人親方も多く存在します。

とはいえ、今後事業を広げたり、対外的な信用を得たりすることを考えると、しっかりとした屋号を設定しておくほうがベターです。


屋号に関する2つの禁止事項

屋号は比較的自由に決められますが、以下の2点には注意が必要です。

1. 「会社」や「法人」などの言葉は禁止

個人事業主であるにもかかわらず、**法人と誤解される表現(例:株式会社、合同会社など)**を使用することは禁止されています。

2. 商標登録されている名前の使用は禁止

他者が商標登録している言葉を勝手に使うと、損害賠償請求などのトラブルに発展する可能性があります。

例:「iPhone」は「アイフォーン」と表記されるのは、「アイホン(インターフォン会社)」の商標に配慮しているため。

商標の確認は、【特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)】で無料で調べられます。屋号を確定する前に、必ずチェックしましょう


失敗しない屋号の付け方|5つのポイント

1. 業種・専門性が分かる名前にする

「〇〇塗装」「〇〇電気」など、何の仕事をしているのかが一目でわかる名前は信頼されやすく、仕事にもつながりやすいです。

逆に「何屋かわからない」屋号だと、名刺交換をしても印象に残らなかったり、連絡先リストから外されてしまうリスクがあります。

2. 信頼感・安心感を意識する

ふざけた名前や不謹慎な表現、中二病的な単語は避けましょう。
たとえば「幻影旅団 足場部隊」では、取引先に不信感を与えかねません。

3. 読みやすく、覚えやすくする

漢字が難しすぎたり、英単語が長かったりする屋号は読みにくく、口頭や電話で伝えづらくなります

例:Refrigerator(リフリッジレイター)など、読み方が難しい単語は避けましょう。

また、地名に使われる「喜連瓜破(きれうりわり)」のように読みにくい漢字の使用も避けるのが無難です。

4. 地域や競合とのバッティングを避ける

Google検索やマップ検索を活用して、同じエリアに似た屋号がないかチェックしましょう。
同名の業者がいると、集客やSEOで不利になったり、間違って連絡されることもあります。

5. 将来性も見据える

今は塗装専門でも、将来的にリフォーム全般に広げる可能性があるなら、少し広めの意味を持たせた屋号にしておくのも手です。


屋号の決め方|手順とアイデア

ステップ1:候補をたくさん出す

まずは思いつく限りの屋号を数十個単位でリストアップしましょう。
「これはナシだな…」というものも、とにかく書き出すことが大事です。アイデアは量から生まれます。

例:

  • 高橋塗装店
  • タカハシカラーズ
  • 彩匠(さいしょう)ペイント
  • ペイントサポート関西
  • K-PAINT
  • 彩建(さいけん)ワークス など

ステップ2:候補を絞る

10個くらいに絞り込んだら、商標登録されていないか確認しましょう。
(→J-PlatPat

ステップ3:ネットで検索する

地域で同じ屋号がないか、Google検索やSNSで確認します。
口コミや評判が悪い業者と似た名前になってしまわないよう注意。

ステップ4:一晩寝かせて再確認

候補が決まったら、一晩寝かせて再確認してみてください。
冷静になって見直すと、「ちょっとダサいな…」「言いにくいな」と感じることもあります。

ステップ5:家族や仲間に意見を聞く

最終候補を絞ったら、身近な人の反応を確認してみるのもおすすめです。
自分では気づかない違和感に気づけることもあります。


商標登録も検討しよう

屋号は法律上の氏名ではないため、第三者にマネされるリスクもあります
必要に応じて、商標登録をしておくことで、名称の独占的使用が可能になります。
弁理士に依頼すれば代行も可能です。


【補足】屋号の付け方アイデア集

  • 名字+業種:例)佐藤塗装、山田電設
  • 地名+業種:例)大阪内装、湘南電気
  • 動詞や想いを込めた言葉:例)彩る工房、築匠(ちくしょう)、守る家電
  • アルファベット+意味ある略称:例)TKペイント(Takashi & Kawamura)、J-TEC(Japan Technology)
  • 漢字一文字+業種:例)匠ペイント、迅電気、創工房

まとめ:屋号は「一生付き合う看板」

屋号は、ビジネス上の顔であり、信頼を得るための第一印象です。
建設業・職人業の一人親方にとっては、名前=ブランドといっても過言ではありません。

奇をてらわず、覚えやすく、信頼される、業種が伝わる名前を意識して、慎重に決めましょう。